
房総の海に似た芳純さ サバ節 千葉県鴨川市
うららの房総の海に、楕円(だえん)形の板につかまった頭のでかいウミウたちが、浮いたり沈んだりしている。高い波が立つと、一斉に2本の足で板に乗って水上を滑走するが、すぐに転倒して海中に没する。海から上がって黒いマスクを脱いだら茶髪の若者だった。かつてはひなびた漁村だった外房・太海(ふとみ)の海も、いまではしゃれたリゾート地に様変わりし、サーフィンの盛んな地になっている。 明るい海を眺めながら海岸線を歩くと、薫煙のにおいが漂ってくる。サバ節を作る工場だった。中をのぞくと、今朝水揚げされたばかりのサバが大量に運び込まれて、作業の真っ最中だった。
山積みされたサバは身が硬く引き締まって、青白く輝いている。パッチリ開けた目も濁りがない。そのサバを手馴(てな)れた動作でさばいていく。
サバは4、5月に伊豆諸島沖に産卵にやってくる。「新黒瀬」「銭州」などの根が漁場で、関東一円から漁船が集まってくる。夜から朝方まで、コマセをまき、海面が盛り上がるように群がってくるサバの群れをたも網ですくい取る。 三宅島から房総千倉まで船で6時間。取ったばかりの生きのいいサバが水揚げされる。漁期の初めのサバは、主に生食用にまわされるが、大量に取れるようになるとサバ節にされる。 頭を落とし、内臓を抜いたサバを枠に並べて釜で煮る。白濁した熱湯がわき上がり、いいにおいの湯気が立ち込める。この煮汁だけでもだしが出ていておいしそうだ。 煮上がったら釜から上げ、手で身を二つに割って中骨を抜く。それを薫製室に入れて、トウジイ(マテバシイ)の薪でいぶす。火力が強く、においがない。1日8時間、数日冷まして5、6回いぶす。 そのあと、室に入れてカビを生えさせながら天日で四、五十日かけて干す。最初に青カビが生え、やがて茶色のカビに変わり、水分が完全に抜けて石のように硬いサバ節になる。すべてが昔ながらの手作業だ。 「いまも手作り。材料を一匹一匹見られるから品物には自信がある」
=2002年5月15日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから= |
※実際に新聞に載った記事とはデザインは違いますが、文章の内容は同じものです。 |
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